「普段与えているドッグフードをふやかして与えたいけど、どうしたらいいのかわからない・・・」と悩んでいる飼い主さんは多いのではないでしょうか。
愛犬が体調不良や食欲不振の際に、ドッグフードを柔らかくして与えることで食べやすくなり、消化器官への負担を軽減することができます。
この記事ではドッグフードの正しいふやかし方と、ふやかすメリット・デメリットについて紹介します。
この記事の特別監修者 – 動物医学の専門家
加藤 寛也
幼少期を共に過ごした秋田犬がきっかけで獣医師を目指す。
学生時代から数えて約10年間を東北で過ごしたため、たまに東北弁が出る。(出身は関西)
興味のある分野は眼科、整形外科。
「ペットやご家族の幸せを第一に考えること」を大切にしている。
猫(アメリカンショートヘアーのミックス)を飼っている。
経歴
2016年 北里大学獣医学部卒業、獣医師免許取得
2016~2022年 秋田県の中核動物病院に勤務
2020~2021年 秋田県での勤務の傍ら、仙台市の眼科専門動物病院にて研修
2022年~2023年 兵庫県の動物医療センターに勤務
2024年春 「しっぽの森動物病院」を開院予定
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ドッグフードをふやかして与えるメリット
ドッグフードをふやかして与えるメリットを解説します。
メリット1.顎や消化器官に負担をかけにくい
柔らかくしたドッグフードを与えることで、胃腸からの消化液が少量でも消化と吸収が行えるため、消化器官に負担をかけにくい利点があります。
また、咀嚼が難しい犬にとって「カリカリのフード」は顎の疲労による食事拒否が懸念されますが、ふやかすことで顎をあまり使わなくても食べやすくなります。
メリット2.満腹感が得られる
ドッグフードに水分を加えるとフードが膨らむため、容積が増加します。
これにより、少ない量でも犬は満腹感を得ることができます。
ドカ食いをしてしまう犬も、水でふやかしてあげることで食べすぎを防ぐことが可能です。
メリット3.胃捻転の予防
胃捻転は、胃のねじれが生じる病気です。
これは遺伝的要因や食後の急激な運動のほか、早食いや大量の食事摂取も一因だと言われています。
直接的な予防策とは言えませんが、ドッグフードを柔らかくすることで、胃捻転のリスクを軽減する効果があると言えるでしょう。
メリット4.香りが食欲を刺激する
ドライタイプのドッグフードを柔らかくすることで、香りが一層引き立ちます。
これにより、犬が食事に興味を持つようになり、食欲を促進することができるでしょう。
メリット5.水分補給になる
通常、ドライフードには10%以下の水分しか含まれていません。
ドッグフードと別で水を与えるよりも、より効率的に、かつ多くの水分を犬に摂取させることができます。
ドッグフードをふやかすデメリット
ドッグフードをふやかすデメリットを解説します。
デメリット1.与えるまでに時間がかかる
食事を作り置きできないため、特に朝は空腹な犬を待たせてしまうだけでなく、時間に制約のある飼い主にとって大きな負担になることがあります。
電子レンジを使用すれば迅速に柔らかくなりますが、注意すべき点として、加熱ムラが機種によって生じる可能性があることに留意してください。
デメリット2.口腔内のトラブルが起きることも
水分を多く含む柔らかい食事は、歯垢として口腔内に付着しやすく、歯周病の原因となり得ます。そのため、食後の適切な口腔ケアが非常に重要です。
歯磨きを行う時間をしっかり確保しましょう。
歯磨きが難しい犬には、歯磨きガムや歯垢ケアができるおもちゃなどのアイテムを試してみることも一つの方法です。
3歳以上の犬の約8割が歯周病にかかると言われているので、こうしたケアに対する意識を高める必要があります。
ドッグフードのふやかし方
ドッグフードのふやかし方をいくつかご紹介します。
ぬるま湯でふやかす場合
ドッグフードをぬるま湯でふやかす手順は以下の通りです。
- 一食分のドッグフードを容器に入れる
- 40℃前後のぬるま湯をドッグフードが浸るくらい注ぐ
- 5分から15分程度の時間を目安に待つ
ふやかす時間は、愛犬の好みに合わせて調整してください。
ふやかす時に使う水分の量と温度
ふやかす時に使用する水分の量は、フード:お湯=1:1の割合でひたひたに注ぎます。
お湯を使用してふやかす場合には、お湯の温度に十分注意してください。高温のお湯を使用すると、ドッグフードに含まれる栄養素が損なわれる可能性があります。
栄養価を保つために、お湯の温度は40℃前後に保つのがおすすめです。
電子レンジでふやかす場合
電子レンジを使用してドッグフードを柔らかくする手順は以下の通りです。
- 耐熱容器を用意する
- ドッグフードを容器に入れる
- ぬるま湯ではなく水を用意する
- ドッグフードが隠れる程度の水を容器に注ぐ
- 容器にラップをかけ、電子レンジを500Wで約20秒間加熱する
電子レンジを使用する際は、過度な加熱を避けるために水を利用するのがポイントです。
加熱後、しばらく放置すると、水分がドッグフードに浸透し、適切な柔らかさになります。
ドッグフードをふやかすときの注意点
ドッグフードをふやかす際には、いくつか気を付けなければいけない点があります。一つずつ解説します。
熱湯は使用しない
熱湯を使えば短時間でふやかすことができる、と誤解している飼い主も少なくありません。
しかし、熱湯でのふやかしや電子レンジでの加熱のし過ぎは、ドッグフードの栄養素を壊してしまう可能性があるため、控えた方が良いでしょう。
ドッグフードは高温で調理された後、必要な栄養素が再び添加されて栄養価を維持しています。
そのため、熱湯などを使用することで、愛犬に必要な栄養バランスが崩れ、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
さらに、熱々のドッグフードをそのまま愛犬に与えると、火傷をする危険性もあるため、ドッグフードをふやかす際にはぬるま湯を使用し、加熱し過ぎないことが肝心です。
ふやかした水も一緒に与える
ドッグフードに含まれる水溶性ビタミン(例えばビタミンB群やビタミンC)は、水と結びつきやすく、水分に触れると流れ出してしまいます。
したがって、これらの貴重な栄養素を無駄にしないためにも、ふやかした水はスープとして一緒に与えるのがおすすめです。
冷たい水でふやかさない
ドッグフードを柔らかくする際には「水」か「ぬるま湯」を使用し、「冷たい水」を使うのは避けるべきです。
冷たい水を使用すると、愛犬の腹部が冷えて腹痛や下痢の原因になる可能性があります。
作り置きをしない
ドッグフードをふやかす際、最も重要なのは1食分ずつふやかすことです。
水分を含んだドッグフードは雑菌が繁殖しやすく、腐りやすくなります。
特に、愛犬が一度でも口にした場合は、食べ残しを残さないように心掛けましょう。
作り置きはもちろん、残飯を放置しないようにすることが愛犬の健康を守るために非常に重要です。
愛犬の好みに合わせた食感を探る
病気などの条件によっては、ドッグフードをペースト状に調理しなければいけない場合もあるかもしれませんが、基本的には愛犬の好みに合った食感のフードを提供してあげましょう。
食事は愛犬にとって楽しい時間であるため、食感が合わないことで食欲不振の原因になることもあります。
喜んで食べてもらえるよう、心掛けたいですね。
まとめ
ドライタイプのドッグフードは、栄養素が高濃度に凝縮されているため、ウェットフードに比べて少量で必要な栄養を摂ることができます。
元気な成犬がドライフードをそのまま摂取できている場合には、わざわざふやかす必要はありません。
ただし、犬の体調が崩れたり、食欲がない場合など、ふやかしたドッグフードが役立つ状況もあります。
正しいふやかし方を知っておくことは、愛犬が子犬や老犬であるないに関わらず、あらゆる状況で役立ちます。
愛犬の状態に合わせて柔軟に選択し、適切な状態で提供してあげましょう。